日産自動車(7201)は、2025年5月に発表した2024年度(2025年3月期)の決算で、厳しい業績を明らかにしました。しかし、同時に発表された経営再建計画「Re:Nissan」により、復活への道筋も示されています。本記事では、最新の財務データと経営戦略をもとに、日産の現状と今後の株式見通しを分析します。
1. 2024年度決算の概要
日産の2024年度通期の連結業績は以下の通りです:
- 売上高:12兆6,332億円(前年同期比0.4%減)
- 営業利益:698億円(前年同期比87.7%減)
- 経常利益:2,102億円(前年同期比70.1%減)
- 当期純損失:6,709億円(前年同期は4,266億円の黒字)
この大幅な赤字の主因は、販売台数の減少、販売奨励金の増加、インフレ圧力、そして特別損失(主に減損損失とリストラ費用)の計上です。特に、4,600億円を超える減損費用と約600億円のリストラ費用が業績を圧迫しました。
2. 経営再建計画「Re:Nissan」の概要
日産は、2025年5月13日に経営再建計画「Re:Nissan」を発表しました。この計画は、以下の3つの柱で構成されています:
- コスト削減:2026年度までに固定費と変動費で計5,000億円のコスト削減を目指します。
- 戦略の再定義:販売台数に依存しない収益性の確保を目指し、製品ポートフォリオの見直しや販売戦略の強化を行います。
- パートナーシップの強化:ルノー・日産・三菱アライアンスの再構築を進め、電動化や自動運転技術の開発を加速させます。
この計画により、2026年度までに自動車事業の営業利益およびフリーキャッシュフローの黒字化を目指しています。
3. 株式市場の反応と今後の見通し
2025年5月時点での日産の株価は、業績悪化を受けて一時的に下落しましたが、経営再建計画の発表により、徐々に回復の兆しを見せています。ただし、依然として不透明な要素が多く、投資家は慎重な姿勢を保っています。
今後の株式見通しについては、以下の点が注目されます:
- 電動化戦略の進展:日産は、2025年以降に新型リーフや新型マイクラEVなどの電動車を投入予定です。これらの新型車が市場で成功すれば、業績回復の原動力となるでしょう。
- グローバル販売の回復:2024年度は、中国や欧州で販売台数が減少しましたが、北米市場では微増となりました。今後、主要市場での販売回復が業績改善に寄与することが期待されます。
- コスト削減の実現:「Re:Nissan」で掲げた5,000億円のコスト削減が計画通りに進めば、収益性の改善が見込まれます。
4. リスク
日産の株式は、現在のところリスクとリターンのバランスを慎重に見極める必要があります。経営再建計画が順調に進めば、中長期的には株価の回復が期待できますが、短期的には市場の不確実性や業績の変動に注意が必要です。
投資を検討する際は、以下の点を考慮してください:
- 経営再建計画の進捗状況:四半期ごとの業績発表や新車の販売状況を注視しましょう。
- グローバル市場の動向:主要市場での販売動向や競合他社の動きにも注意を払いましょう。
- 為替や原材料価格の変動:円安や原材料価格の上昇は、業績に影響を与える可能性があります。
5. 結論
日産自動車は、2024年度に大幅な赤字を計上しましたが、新たな経営再建計画「Re:Nissan」により、復活への道筋を示しています。今後の業績回復には、電動化戦略の成功やグローバル販売の回復、そしてコスト削減の実現が鍵となります。投資家としては、これらの要素を注視しながら、慎重に判断することが求められます。
参考資料:
- 日産自動車 2024年度決算資料
- 日産自動車 経営再建計画「Re:Nissan」発表資料